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1.居候2012.01.22 Sunday
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俺はアル。中学二年生、一人暮らしをしている。その家に鳩人間シェリアクとナシラにそっくりなペンギンの雄が居着いてしまった。鳩人間シェリアクの「鳩人間じゃお家に帰れない」と言う泣き落としに流されてしまったのである。
鳩人間もペンギンもゲームや動画漁りばかりしてる廃人だから身の回りのことをしない。
「えー、インスタントラーメン〜?」
「居候の癖に生意気言うな!」
「いわしがいい〜」
手をばたつかせるペンギン。見た目はナシラ。
「回鍋肉ひとつ」
シェリアクもさりげなく注文する。
「自分で買って来い!」
一人暮らしを始めたばかりのアルはほとんど料理ができない。迷惑な居候に施してやる必要もない。
アルが夕飯を作ってくれる気がないと理解した鳩人間は仕方がないと携帯をかけた。
手で口許を抑えているので会話の内容は聞き取れない。出前でも頼んでるのだろうか?
通話が終わると、アルの携帯に着信があった。
見知らぬ番号からだった。
「…もしもし?」
「ひどい。」
「えっ?」
電話の声は、透き通るような美しさとかわいらしさを兼ね揃えた少女の声であった。
「飼い主の義務を放棄するなんて最低。」
「えええっ?」
「中学生にだって責任はあると思うの。」
そう言って電話は一方的に切れた。
一方的に叱られたアルは硬直した。そして気付いた。
(…ケーティだ。)
理不尽だとかなんでケーティがとかいろんな考えが交差したアル。妙な疲労感が押し寄せ、重い足取りで隣人をインターフォンで呼び出した。
「事情は後で話す。シェリアクとペンギンに餌を作ってやってくれ…」
イスタルはアルの様子を心配しながら無言でうなづいた。
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9.違い2012.01.19 Thursday
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郎女の在籍する高校の教室にその姿はなかった。もう帰ったらしい。郎女がいるんではないかと部室に戻ったアル。
その目に映ったのは二人の廃人であった。画面に向かって笑ってるシェリアク、やってるのは馬鹿ゲー。
画面に向かってにやにやしてるナシラ、やってるのは牧場ゲー。
二人はゲームに夢中でアルに反応しない
ゲームに向かって指差しで笑うシェリアク。
「おー地球くっついた〜!」
「系統があってないから芸術点は低そうじゃない?」ナシラはそう言ってシェリアクの画面をにやにや見ながらも手を休めない。そこでふとアルは違和感を感じた。ナシラは眼鏡をかけている、それからちょっと声が低い。
「おいナシラ?風邪ひいてんじゃねえか?」
眼鏡っこのナシラがきょとんと眼を見開いてから、こちらに向かってきた。低い目線の彼女は俺を見上げ、上目づかいで首を傾げる。
「ナシラのことナシラって呼んでくれたー。嬉しいナ!」
子供のような笑顔を浮かべる眼鏡っ子ナシラ。ロリキャラとして完璧な彼女にドキドキする。
「何言ってんだよ、ナシラはナシラだろ?」
赤くなった顔をごまかすためにアルは話を続ける。
そんなアルの手にナシラはそっと手を重ねる。そしていたづらっぽく笑って、右手の人差指で自分を示す。
「でも、このナシラはペンギンだよ?」
「へっ?」
アルは目の前の姿をまじまじと見る。己のことをペンギンというその姿は、顔も身長もナシラそっくりだが眼鏡をかけ、男子の制服を着ていた。
‘彼’はナシラの代わりに授業を受けているペンギンであった。アルにだけはただのペンギンに見えて、アル以外にはナシラそっくりに見えていた。今までは。
(ナシラそっくり。。。てか雄なのか。。。)
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8.学園に感じる違和感2012.01.15 Sunday
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学校の正門付近、人だかりができていた。見惚れている男生徒たちと、心酔している女生徒達。
誰か有名人が来ているのだろうか?
人だかりの中心を覗いてみると、ピンクの長い髪とドレスを着たお姫様の格好のケーテイ。
(うわっ、むっちゃかわいい。コスプレってどうかと思っていたけど、最高!)
「姫!」
「ひめ!」
人だかりは姫コールを始めていた。気がつくと俺も叫んでいた。
ケーテイは、そんな俺に気付くとプイと視線を背けた。
(人だかりの中から俺を見つけてくれた!嬉しい!けどなんか機嫌が悪い?)
胸の高鳴りと妙なもやもや感を抱えたまま、学園内を歩くアル。食堂で紙コップのオレンジジュースを買い、ぼんやり歩いていたら、普段は来ない場所、事務室の側まで来ていた。
生徒のあまり来ないここは展示スペース、学園の生徒がもらった表彰状や歴代の校長像がある。
「なんか、ひどいな。。。」
校長像は前にシェアトに破壊され、日曜大工レベルな修理しか施されていなかった。故に、脳天から縦に真っ二つにされた跡や、首がもげた跡がある。全体的にひびも多い。
「管理、悪すぎじゃね?」
アルはシェアトが校長像を壊したことを知らなかった。
展示スペースの奥、校長像とは雰囲気の異なる掛け軸があった。天女の姿絵だ。墨で描かれ、和の色彩で彩られた優雅な女性。掛け軸の下には名前があった。
‘田中郎女天’
「?!!」
掛け軸の女性は、天女の羽衣をはおっていたが、顔は間違いなく郎女だった。雰囲気もそっくりで、他人の空似とは思えない。
この郎女の姿絵は前からあったのだろうか?やはり俺は夢を見ているのだろうか?
アルは郎女を探すことにした。
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7. 部室に感じる違和感2011.12.18 Sunday
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「助かったよ、君のおかげで人間に戻れた。」
そういう男はシェリアク部長?
声はシェリアク部長だったが、体は人間で顔は鳩の鳩人間であった。
「君には貸しができた。」
シェリアクは、ご機嫌な声だったけど、表情は鳩で無表情だ。笑っているつもりなのだろうが目が怖い。
「これで引きこもれるよ」
シェリアクは部室の隅に行くと、ごそごそとゲームを設置し始めた。
「元の世界に戻ってきたんだよな?」
シェリアクの鳩人間姿から受けたショックより、アルは直立不動で固まっていた。
部室のドアを開いて入ってきたイスタル。重そうなリュックを背負っている。軽く俺に会釈をし、リュックを床に置いて部室の端の席に座る。
「ふう」
「よお、イスタル。」
「ああ」
イスタルは開いたリュックからから見える大量の本から一冊を取り出した。そしてパイプ椅子に腰かけ読書を始めた。足を組むこともなく、大人しく本を読んでいる。
「シェリアク、おかしくないか?」
部室の隅でゲームとネット環境を整え、画面に夢中なシェリアク鳩人間。
手元の本から視線を上げ、ちらりと部屋の隅のシェリアクを見るイスタル。
「前からあんなだろう?」
イスタルは手短に答え、また視線を本に戻した。
「前からあんなだって?」
鳩人間だぞ?器用に、携帯ゲームをいじる両手は翼だぞ?
だが俺の感じるような違和感を、イスタルは感じていないようだ。黙々と本を読んでいる。何も変わっていないかのように。
(本当に何も変わってないのか?もしかして俺はまだ夢を見ているのだろうか?)
俺は自分の頬をつねる、痛い。
イスタルが俺を見つめる。
「いや、夢かと思って。」
かわいそうなものを見る目のイスタル。
「シェリアクが鳩人間でひきこもりなのは出会ったころからだろ?」
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6.ハトの災難2011.12.11 Sunday
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赤く燃えあがりロケットのように噴射する俺の体。景色が流れていく、どうやら俺はとんでもないスピードで、地上すれすれを飛んでいるようだ。
(ええ、ちょいまっ??)
電柱にぶつかった。電柱はぽっきりと折れて倒れた。
アルは無傷だった、いつのまにかローズレッドに変身していたおかげのようだ。痛みはあるが。
「・・・」
痛みに声も出せず悶えるアル。
(あれ、神社?)
飛んで、神社に戻ってきてしまったようだ。
「げっ」
目の前にメイズ達、また円陣を組んでいる。
俺の体は勝手に飛んでいる、迂回なんてできない。勢いそのままハンプテイーダンプテイーメイズにぶつかる。
「いっ?!」
1,2,3,4,5
メイズが割れる。
「いててて。。。」
体が自由に動くようになったアル。立ち上がったアルの視界に入ったのは、卵の中身と殻が散乱した神社の境内。卵の白身でネトネトしている俺の前に白い鳩がいた。
ペンペンペン、ペンギンが両手を振りながらやってきた。ペンギンはくちばしで白い鳩を加える。
「くるっくーっ!」
ハトがあがいている。
「鳥同士で食うな!!」
「餌!餌!!」
手をばたばたさせるペンギンナシラ。
(えー。。。)
展開が読めないアルだが、右手でポケットをさぐると薔薇の実があった。
「こいつに薔薇の実を食わせればいいのか?」
薔薇の実を見たペンギンの動きが止まり、続いて口から鳩が落ちる。
愉快な曲が遠くから流れてきた。だんだん近づいてくる。だんだん。。。
「ばくんっ。」
猫バスシェリアクがやってきてハトを食べてしまった。
気がつくとアルは部室にいた。
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5.ペンギン2011.11.16 Wednesday
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このペンギン、ナシラが補習の身代わりにしたペンギンに似ている。
「・・・」
俺にこれ(ペンギン)をどうしろと言うんだ?
「があ」
手をばたつかせるペンギン。
「があがあがあ」
くちばしを高く上げて俺をつついてきた。結構痛い。
こいつは何なんだろう?ナシラのとこのペンギンなのか?ペンギンの目をみつめるアル。ペンギンは小さい、俺を上目づかいで見つめるとり目。
「ナシラだよ。」
(しゃべった!?)
俺は恐怖を覚え、反射的に逃げ腰になった。
「敵じゃないよ、ナシラだよ。」
手をばたばたさせるペンギン。妙にバカらしい仕草に警戒心が薄らぐ。
「アルはシェリアクを助けるんだよね。正義の味方だから」
とり目なペンギンが、ナシラにそっくりの表情を浮かべた。ジャンプして俺の顔の高さまで飛び上がったペンギン。
(へっ??)
ペンギンが俺の口に何かを突っ込んだ。
息ができない、テニスボール大。。。ああ、薔薇の実だ。
ペンギンが叫んだ。
「ローズレッド、飛んでけー!」
ポーズを決めるペンギン、声はナシラよりりりしかった。
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4.生卵2011.10.31 Monday
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メイズという人間の魅力は、その雰囲気だ。見知らぬ異世界に対する恐怖も吹き飛ぶ圧倒的な存在感。姿が卵になっている事など些細なことだ。
「お前さ、割れて中身がこぼれたんじゃないのかよ?」
アルは卵、ハンプティーダンプティがメイズであることではなく、前に割れていたことをツッこんだ。
「そう!私は割れたのだよ。。。」
長い睫毛を伏せるメイズ。
「痛かった!」
カッと眼を見開くメイズと目が合う。ハンプテイーダンプティのメイズの目は大きい、片方だけでアルの顔くらいある。アルは一瞬固まり、ダッシュで逃げ出した。
「おおっ?マイソンなぜ逃げるのだ?!」
メイズの叫びにアルは振り返ることなく走った。
「ハトはどうしたの?シェリアクを助けるんじゃなかったの?」
アルを見上げる視線。かわいらしい声はケーテイ?
いや身長が低い。白いワンピースを着た少女はケーテイにしては幼い。10才くらいだ。赤いリボンでさらさらと流れる髪を飾っている。下から見上げる彼女は上目づかいでかわいい。赤いリボンに、アルは夢で見た血まみれで包丁を掴んでいたケーテイの姿を思い出す。じっと幼いケーテイを眺める。怖い記憶の彼女と重なるが、愛らしい笑顔を浮かべている。‘こんなかわいい子が恐ろしいわけがない’いつものケーテイとは別物だが、大丈夫とアルは感じた。アルの直観はあまり当たらないが。
白いワンピースを着たケーテイは、両腕でピンクの鳩を抱いていた。
「あなたが探しているのはピンクの鳩?」
「いえ、俺が探しているのは白い鳩です。」
なぜピンクなんだと言うツッコミを飲み込んだアル。
ケーテイの横にピンク色のペンキの入ったバケツが置いてあった。ケーテイはバケツの中身を頭から被った。金の髪も白いワンピースもピンクに染まる。
ケーテイはピンクの鳩を抱いて去っていった。
代わりに黒いペンギンを背負ったイスタルがやってきた。
「ふう」
彼はめんどくさそうにペンギンをアルの前に降ろした。そしていつも通りの無表情で言い放った。
「よろしく頼む。保護者」
黒いペンギンを残し去って行ったイスタル。
「???」
アルは状況が飲み込めない。
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3.毒うさぎ2011.10.12 Wednesday
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優しいヒーロー部の良心、郎女先輩。いつもなら、郎女に会えただけでもアルは舞い上がる。だが目の前の彼女は似ているだけで郎女さんではないかもしれない。だってこの郎女はウサ耳を着けているのだ。ここによく似た夢で、郎女によく似た存在にスプラッタされた記憶がよみがえる。
恐怖を感じたアルは半歩下がる。
郎女はほほ笑む。笑顔は純朴で郎女そのもの。優しい雰囲気。もしかして郎女はいつもの郎女なのかもしれない。麗しの郎女さんに失礼なことはできない。男として。
アルは笑顔で挨拶する。
「こんにちは」
郎女はほほ笑んでいる。
「いい天気ですね!」
郎女はにこにこしている。細められた瞳が紅く光った気がした。
「うわあああああ」
アルは夢中で逃げだした。だが郎女は追いかけて来た。足が、浮いている。郎女だと思った存在は郎女どころか人ならぬ存在であった。
郎女と似た外見の何かから逃げた先は神社だった。赤い鳥居をくぐると童謡が聞こえてきた。
「かーごめかごめ…」
アルはひきつった。この声には聞きおぼえがある。
茂みに隠れ声のする方を覗くと、ハンプティーダンプティ達が円陣を組んで鳩を囲んでいた。前に夢で見たハンプテイーダンプテイーのメイズ。円陣を組んでいるメイズ達。メイズが5人いる。
「ぶはぁ?」
アルは盛大に吹き出した。一人でも強烈なメイズが5人。円陣の中心には怯えたハト。
「おお、マイサン!」
メイズに気付かれた。
「やぁ」
ウィンクで挨拶するメイズ。ハンプテイーダンプテイーのメイズは、卵の姿。体の大半は大きな瞳が占めている。存在が濃い。長くて黒い睫毛が瞬くと、バチリと音がした気がした。
アルはげんなりした。
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2.妄想世界2011.10.08 Saturday
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視界が霞む。身体に感じる違和感。ああ、そうだ俺はナシラに擬人化銃で撃たれたんだ。
(俺もシェリアクみたく鳩になったのか?)
アルは自分の身体をぼんやり眺めた。身体はなんら変わってないようだ。
状態を起こし辺りを見渡す。見知らぬ景色。古いビルを伝う太い幹、濃い緑のツタと巨大な薔薇の花。見覚えがある、前に夢でみた。
ここはどこだ?何か纏わりつく空気が違う気がする。ナシラは妄想世界と言ってた気がする。それからシェリアクの鳩をよろしくと。
(あれは夢じゃなかったのか?)
思考がフリーズした、座り込んでいるアルの前をトテトテと鳩が歩いて行った。続いて手足の生えた目覚まし時計がバタバタ歩いて行った。
「?!!」
時計は小さいが顔がシェアトだ。
(動く目覚まし時計?見覚えがある。そうだ、シェアトだ。夢ん中で。えっ?)
そう、夢だったはずだ。
シェアトは鳩にじりじりと詰め寄っている。シェアトは何をする気だろうか?トラブルメーカーのシェアトだ、大人しくしているはずがない。
小さな手足の時計シェアトが跳ねる。同時にけたたましくジリリリと鳴った。シェアトは目覚まし時計なのだ。鳩は驚いた。驚いた鳩は目を大きく見開いて羽をばたつかせる。動揺した鳩は走り出し、両足でがっしりとシェアトを掴んだ。そして飛び去った。
「おっ?!離しやがれ?!!」
ハトに掴まれて飛んでいくシェアト。
「何やってるんだよあいつは!」
アルは鳩と時計のシェアトを追いかけて走った。随分走ったが、結局、鳩達は見失ってしまった。ぜえぜえと建物の影でへたりこんだアル。
(ここはどこだ?)
辺りを見渡す。風化した建物は緑で覆われていた。元はかなり大きな街だったようだ。
隣に気配。
アルがあわてて振り向くと、白い肌に黒髪ショート、麗しの郎女さんがいた。
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1.鳩の恩返し2011.10.06 Thursday
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放課後、アルが一人で立ち寄った部室にいたのは一匹の鳩だけであった。鳩は元は人間。ヒーロー部の部長シェリアクである。鳩になってから随分時がたつ。気がつけば季節は夏から秋に移っていた。
部室の長い机の上、一枚の紙切れがあった。
‘人間に戻りたい’
紙切れに書かれたたどたどしい文字。部室の窓際、一人(一匹)たたずむハトになったシェリアク部長。
(くちばしで鉛筆をくわえて書いたのか…)
シェリアクはいたづら好きでアルにとってかなり迷惑な先輩だ。だがずっと鳩なのはかわいそうだ。憐みの気持ちが芽生える。
「クルック」
シェリアクは一声鳴いた。
そんなアルとシェリアク鳩を、部室のドアの影からナシラが観ていた。
‘にやり’
彼女はいたづらっぽく笑った。
ナシラはアルにちょこちょこと歩み寄った。
「シェリアクを人間に戻す方法、教えてあげるよ。」
満面の笑顔を浮かべて首を傾げる。
「知ってるのか?」
なんでお前が知っている、とアルが素朴な疑問を口にする前にナシラは喋り出した。
「これを頭の中が鳩さんになっちゃったシェリアクの身体に飲ませればいいよ〜。」
アルはナシラに薔薇の実を渡された。
「なぜ薔薇の実?」
アルは薔薇の実に見覚えがある。過去、シェリアクに渡されて、アルは眠りに落ちた。そこで変な夢を見た。あの時はテニスボール大だったが、今回は飴玉程度の大きさである。
「あのね、薔薇の実と擬人化銃の成分はおんなじなんだよ。現実世界と妄想世界を繋ぐんだよ。」
ナシラは得意げだ。
「妄想世界?」
アルは首を傾げる。だが考える前、アルの目に銃を構えるナシラの嬉々とした顔が映り込んできた。
「じゃあ、頑張ってね。シェリアクの鳩をよろしくね。」
銃声が耳元に響き、意識が遠のいていった。
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